座談会|『勧進帳』より

John de Perczel[空(UTSUBO)]
清水久美子
亀島一徳[ロロ]
福原冠[国道五十八号戦線]
重岡漠[青年団]

京都×横浜プロジェクト2010『勧進帳』の出演者たち、そして木ノ下が1年ぶりに集結! オーディションのこと、稽古のこと、そして再演について!?などなど、ざっくばらんに語った。瓦版では語られなかった話題も満載で、ロングバージョンをお届けします。

なぜオーディションを?

重岡 僕は「キレなかった14才♥りたーんず」で邦生さんと知り合ったんですが、邦生さんから木ノ下歌舞伎のオーディションがあるとメールをもらって。声掛けてもらってうれしかったのと、京都に行きたいなと(笑)。

福原 僕は、木ノ下歌舞伎『三番叟』のチラシがすごくかっこいいなと思って、以前HPを探したことがあったんです。その時はそれだけだったんですけど、その後オーディションがあると知って、「あれ、あの団体じゃないかな」って思って調べたらやっぱりそうで。直感で、絶対に面白いはずだと思ったんですね。あと、歌舞伎はなぜか自分に合うと思って(笑)。絶対に合う、もう受けに行くしかないと思ったんです。

亀島 大学生だったんですけど、当時プチ歌舞伎ブームみたいなものが自分の中にあって。学校で中村勘三郎さんの出演している舞台を観て、「勘三郎かっけーな!」って思った、くらいのことなんですけど。あと、自分より年上の、りたーんずの演出家さんたちの存在が大きくて、できれば一緒に何かやりたいなと思ってたので、邦生さんの演出で歌舞伎ができるなら、と思って応募した感じです。

清水 私、某夢の国でエンターテインメントの舞台をやっているんですが、小劇場にも出てみたいなと思ってて。で、mixiでオーディションのことをたまたま知って、面白そうだなって。歌舞伎を歌舞伎俳優じゃない素人がやるっていうことに興味があったので、応募したんですけど、後で男性限定だったことを知って(笑)。でも「良かったらワークショップ受けに来てください」って言ってもらって、ラッキーと思って行ったら、受かってしまったという。

全員 へー!

ジョン 僕はオーディションを受けてなくて、(中野成樹演出の)『忠臣蔵とのこと』のワークショップに参加した時に、それを観に来ていた邦生さんと木ノ下君に声を掛けられたんだよ。役者じゃないから迷ったけど、でも歌舞伎には興味があったし、弁慶役ならいいなと思って、「やりますよ〜」って返事したんだけど……思ってたよりも重たいものだったな〜。

木ノ下 だって主役なのにさ、軽いわけないやん(笑)!

全員 (笑)

稽古では何を?

木ノ下 まずは、歌舞伎の『勧進帳』の完コピ(完全コピー)をやったね。

清水 その完コピの様子をUSTで流すっていうから、すごいがんばったよね、あの日まで。

ジョン 『勧進帳』のビデオを何度も見て、所作から鳴りものまで完コピしたね。冒頭の「1800回も〜」っていう解説を何十回も聴いたなあ。

亀島 iPodにも音源を入れてね。

清水 電車の中とかで聴いてた。

重岡 僕音痴だから、自分では本気でやってるのにふざけてるって言われて、どうしようと思った(笑)。

福原 正座もきつかったよね〜。

全員 うん!

ジョン 膝が痛くてサポーターしてね。だんだん慣れて来たけど、もう今は無理だな(笑)。

清水 歌舞伎俳優の身体があんなに大変なんだってことを素人ながらにすごいなっていうさ、正座だけでもこんなに大変なんだってよく分かった。

福原 でもあの完コピが実際にあんなに反映されるとは思わなかったな。

木ノ下 完コピを割と残したのは、完成度がけっこう高かったから(笑)。あと僕と邦生さんの中で、『勧進帳』をこう演出したいって要望がはじめからガンとあったわけじゃなくて、それよりはみんなから出て来る、いわゆる歌舞伎好きじゃない人のフラットなアイデアを抽出してつくろうとしたからなんだよね。木ノ下歌舞伎としてもそれはすごい新鮮なやり方やったんだけど。

京都と横浜、2都市ツアーはどうだった?

清水 京都は知り合いがいないから、のびのびやれたな。

亀島 お客さんとの距離も違った。あと、横浜のSTスポットは壁が白だけど京都の劇研は黒だったし……。

福原 京都の生活、最高だった! 初めて帰りたくない、拠点は京都でもいいなって思った。

亀島 めちゃめちゃ京都愛してるなあ(笑)!

福原 うん(笑)。やっぱり作品をつくる場所が大事じゃないですか、演劇って。その点、『勧進帳』の稽古場だった急な坂スタジオと京都は雰囲気が近いなと思った。いいものがつくれる雰囲気というか。

木ノ下 僕も横浜に対して同じ意見を持ってて、横浜が拠点でもいいなって思った。

福原 どちらもいい具合に物がないんですよね。それがいい。

あらためて振り返って、普段出演している舞台との、演じる上での大きな違いは?

福原 完コピまではとにかく音や所作をまねることをがんばったけど、でもそこから先は芝居だと思ってやりました。歌舞伎は型で間合いや所作が決まってるけど、その中で気持ちをどうするかっていう。しかも僕の相手は外国人のジョンで、せりふの一部が英語で聞こえて来るのに対して、どう芝居するかっていう。

亀島 僕は、歌舞伎のある意味形式的になりすぎてる部分をまず身体にコピーして、そこから逆算して演技を考えましたね。なぜこの型になったのか、なぜこの格好なのかを考えながら、そこに実はこういう想いがあったんじゃないかとか、こういう意味だったんじゃないかとか、推測して。

ジョン 僕はこんなに大きな舞台は初めてだったから、やっぱり難しかった。どう見えるかしか考えられなかったような気がする。でも、特に弁慶は、いわゆる俳優のメソッドアクティングっていうか、役作りの必要性をあまり感じなかったね。むしろ歌舞伎はショーだなって感じがした。
 ……ああ、思い出して来ちゃった。僕、千秋楽にすごい泣いたんだよね。ガッツリやれて楽しかったから。ねえ、ロス公演しようよ!

全員 わあ、したいしたい!

ジョン みんなロスに来たらいいよ! ロスで再演しようよ(笑)!