【義経千本桜】俳優インタビュー⑦|立蔵葉子

『義経千本桜-渡海屋・大物浦-』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
第七回は立蔵葉子さんです。

2016年5月12日 森下スタジオにて収録

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初演からの変化と新たな解釈について

2014年の初演から再びの出演になりますが、前回と比べるとだいぶ変わりましたね。演出もですけど、自分自身にもいえることだと思います。役に対する深め方も、レクチャーを聞いたり皆で勉強したこともあって、説得力が増したように思います。それと連動してか、今は役に対して、特別なキャラクターとして演じようとせずに、人間として普通の感覚をもって心情を組み立てられている気がします。

完全”コピーで実感したこと

初演の稽古は必要な部分だけ抜き出した一部分をコピーしたので、完コピをするのは初めてでした。初演のときは、歌舞伎独特の喋り方を真似ればそれらしく聞こえると思ったので、お手本の映像を踏襲しつつも、自分がやりやすいようにアレンジしていたんですが、今回徹底的に完コピをやってみて、色々と発見がありましたね。音の高さとかは変わらなくても、確固としたリズムが確立されていたり、一定の速度で話しているかと思いきや、立てたい台詞は微妙にゆっくり言っていたりして。奥が深かったです。でもなんとなくなぞるのではなくて、映像の役者さんと全く同じスピード、全く同じ長さで実際に台詞を言ってみると、実際にその役の<状態>になれるということは不思議でした。例えば、怖がるシーンは本当に怖いと思えるとか…やってみたら気持ちがわかったというか、完コピを経て、役についてより納得できてきた気がします。

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口語に変換する難しさ

今回の稽古ではじめて台詞を口語に変換して話したんですけど、難しいですね。歌舞伎の言葉とか雰囲気を崩して意味を伝えようとすると、片言になっちゃうんですよ(笑)自然な言葉づかいにするために、なるべく直訳でなくて意訳をしようと心がけたんですが、そのお陰で、もとの台詞を理解しようと、いつも以上に噛み砕いた様な気がします(笑)

今と昔、共有できる瞬間を

歴史を下敷きにした作品なので、その時代の知識も増えましたけど、意識的に「背景をのせよう」とはしていなくて。でも知っていてやるのと、知らないでやるのは何かしら違うだろうなと思いますね。頭では考えないけど、体は自然と反応してくれるんじゃないかなと思っています。
この『義経千本桜』って、800年位前の話を、約300年前に書いた大昔の話なんですよね。そんな昔のお話ですが、観ているお客さんが、何かしら身近なことに関連づけたり、なんとなく「自分のことかもしれない」と共有できる瞬間があったら嬉しいです。

tachikura
立蔵葉子 Tachikura Yoko[青年団]

1983年生まれ。劇団青年団に入団。主な出演作に、『ソウル市民』、『サンタクロース会議』、『忠臣蔵・OL編』。青年団以外にも、ミクニヤナイハラプロジェクト、五反田団、toi、わっしょいハウスなどの舞台作品に出演。山下残『庭みたいなもの』、MOKK『ヴァニッシング・リム/Vanish』とダンス作品にも参加する。個人ユニット「梨茄子」をごくまれに始動。木ノ下歌舞伎へは、2012年『義経千本桜』(「渡海屋・大物浦の場面」)に続き2回目の出演。


所属事務所|レトル
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