【義経千本桜】俳優インタビュー⑨|山本雅幸

『義経千本桜-渡海屋・大物浦-』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
最終回は山本雅幸さんです。

2016年5月13日 森下スタジオにて収録

インタビュー|山本さん_1388

遠かった歌舞伎を近づけたキノカブ作品

木ノ下歌舞伎を初めて観たのは、2007年にこまばアゴラ劇場で上演した『yotsuya-kaidan』です。木の台を使った演出が面白くて、絵的にも印象的でしたね。それから何作も拝見する中で、特に面白いと思ったのがまさに初演の『義経千本桜』で。遠いものだった歌舞伎と現代劇とを繋げて、新しいジャンルの作品をつくっているなと思いました。それに「自分の子の首を差し出す」とか現代ではわかりづらいことを、時代だからしょうがないと片付けるのでなく、いまを生きている人達の心情にも訴える作品になっていたことも印象的でした。

完コピ稽古でみえてきたこと

最初に映像を観たとき、細かい部分までは理解してなかったと思うんですが、解説を聞くうちに段々わかってきて…そういえば今日、お手本の映像を頭から音声だけ聞いてみたんですけど、台詞の意味とか、この人がなぜその言葉を発したのかとか、すんなり入ってきたんですね。たぶん、目の前で完コピが立ち上がる過程を見られたのが大きいと思います。皆さん、歌舞伎の<型>を超えて<人間>として立ち上がっていて、日を追う毎に立体的にみえてきたので。歌舞伎の言葉をしゃべっているのにちゃんとそこにいて、普通に生きている人、自分と遠くない人だって思えたんです。
言葉だけでなく、体を分析するのも難しかったですね。お手本映像の人たちの立ち回りは、すごく軽々やっているようにみえるんだけど、本気で戦っているようにもみえるし、それでいて美しい。“どう見えるか”っていうのがすごく大事なんだなと思いました。やってみての感想としては、立ち回りってちょっとダンスっぽくて、きまると気持ちよかったです(笑)

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型があり、気持ちがあるということ

完コピを終えて、はじめはまだ型に重きを置いていた部分もあったんですが、もっと純粋にお芝居をつくることが重要だとわかりました。自分がどういうことを思っていて、この状況をどうしていきたいのかっていう、普通のお芝居をつくることが。だから段々自由になってきているかもしれません。でも型があるからこそ、今の自由さがあるんでしょうね。

「これが今の歌舞伎だ」と思える作品に

見どころと問われると、本当に沢山あります。まず、とにかく皆かっこいい。そしてこの作品を観ていただくと、僕がキノカブ作品を観てそうだったように、歌舞伎や歴史の出来事といった遠いものが近づいてくるのではないでしょうか。何かを感じていただける瞬間が沢山あるし「これが今の歌舞伎です!」と提示できる作品になると思います。

yamamoto青年団スイッチ総研]

1981年生まれ、神奈川県出身。2003年から現在まで青年団に所属。同劇団の国内及び海外公演に多数参加。2015年からはスイッチ総研にも所属。各地にて場所に応じた作品を研究開発、上演している。近年の主な外部出演作は、ままごと『Theater ZOU-NO-HANA2015』、渡辺源四郎商店『修学旅行』、東京デスロック『東京ノート』など。映画『さようなら』(監督:深田晃司)、Aflac、docomoなどのTVCM他、映像分野でも活動。



所属事務所|レトル
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