【勧進帳】俳優インタビュー⑤|重岡漠

『勧進帳』公演に向けて、出演者の生の声をお届けします。
第五回は重岡漠さんです。

2016年6月21日 急な坂スタジオにて収録

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初演『勧進帳』から四作品目の木ノ下歌舞伎

初演から再びの出演になります。初演時は、オーディションでキャスティングしていただきました。歌舞伎自体は、歌舞伎座で何回か観たことがあって、とにかく煌びやかだなとか、大きい装置が舞台の地下から出てきたりしたのを覚えていたので、すごく派手だな!という印象は持っていた気がします。でもその歌舞伎と木ノ下歌舞伎は多分違うんだろうなと、事前に公式サイトで舞台写真を見てわかったので、構えずに挑めた気がしますね。白塗りで見得きってみたいな、いかにも歌舞伎!っていうお芝居ではなさそうだったので(笑)
でもオーディションでは、歌舞伎の『勧進帳』の台本を渡されて、読んでみてっていわれたんですけど、もう訳がわからなくて。でも僕みたいなものが歌舞伎っぽく喋ってもたかが知れてるから、「いかに歌舞伎の言葉をだらしなく読むか」ということをとにかく頑張った覚えがあります。それで受かったかはわからないですけど(笑)そのあと邦生さんが音楽を流して好きに動いてっていう課題があったんですけど。僕は「歌舞伎だから“和”っぽい動きがいいんだろう」と、考えていて…四股を踏んだのは覚えてますね。僕の中の最大限の和が、四股や突っ張りをすることだったんです。当時はそれくらいしか、歌舞伎の知識がなくて。でもそこから『夏祭浪花鑑(白神ももこ演出/2011)』『義経千本桜(多田淳之介・白神ももこ・杉原邦生の共同演出)/2012』で今回四作品目の出演となる訳ですから、有り難いですよね。

四人の中で自分はどう演じるか

完コピでは、まず番卒や四天王は台詞が少ないし、しかも映像が古くて顔がみえなかったりしたんですけど、この人はきっとこういう表情をしている!とか想像してやってみましたね。番卒の四人の中で自分はこうしようみたいな意識はありました。邦生さんが「キャラクターをたたせたい」と稽古のときにいっていたことも影響してか、そういう意味でも周りとの差別化を図ることを、完コピの段階から意識していたかもしれないです。

完コピを終えて、邦生さんが書いてくださった現代語の上演台本を基に稽古が始まったんですけど、今回は番卒や四天王にも個性があるのが面白いと思いました。初演は多分、亀さん(亀島一徳さん)と二人で一セットとしてやることに意味がある役割だったので。でも今回は一人の人間として存在できるというか。
今回僕の役は二役あるんですけど、役の一つの番卒は、言いたいことが言えない役。言いたいことを他の人が言ってしまって、それに対してイラつきがある。で、ふてくされるし、つっかかる。あともう一方の義経の家来・片岡八郎役は集団の問題点を引いて見ているような気がしますね。だからといって義経にさからう勇気もないんですけど。あと今回は共演者の皆さんも個性が強いし、オリジナルの上演台本が別にあったり、作り方からして全く違うので、作品がどこに終着するか想像がつかないですね。

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空気感をお客様に伝えたい

邦生さんの現場は8回目になるんですけど、今回は特に実験しながら作っている感が強いですね。あと歌舞伎の上演台本とは違う、オリジナルの台本も邦生さんが書いてくださってるので、やりたいことがあるのもなんとなくわかります。まだ手探りの状態ではありますけど。あとは、稽古場を楽しく保つっていうことを意識しています。稽古場の雰囲気がそのまま表れる作品になると思うので。この空気がいつのまにか作品の空気になって、お客さんに伝わるといいなと思います。

shigeoka
重岡漠 Hiroshi Shigeoka [青年団]
1988年生まれ。福岡県出身。レトル/劇団「青年団」所属。日本大学芸術学部卒業。在学中に、平田オリザ率いる劇団「青年団」に入団。以降、舞台を中心に活動。近年は、ドラマ・CMなどの出演も多数。 主な出演作品に、城山羊の会『水仙の花 narcissus』(15年)、ドラマ WOWOW『グーグーだって猫である2』(16年)、ミクニヤナイハラプロジェクト『東京ノート』(16年)、など。木ノ下歌舞伎作品には『勧進帳』『夏祭浪花鑑』『義経千本桜』に出演。

所属事務所|レトル