七世坂東三津五郎著『舞踊藝話』(演劇出版社)

books_banner

「木ノ下裕一オススメの古典芸能にまつわる本を紹介する企画。
いま読むべき一冊を木ノ下が一言で紹介します!」
(20回に渡る入門書特集の締めくくりとして、今回は年末スペシャル号をお送りします)

歌舞伎舞踊の愉しみと深みを余すことなく伝える本

七世坂東三津五郎著『舞踊藝話』(演劇出版社)

一流のアーティストが語る言葉は魅力的です。それは、彼らの言葉に、厳しい修練によって磨き抜かれた独自の〈感覚〉と〈知恵〉がじっしり詰まっているからでしょう。本書は、舞踊の名手として知られた七世三津五郎が、若き日の苦労話や失敗談、見聞きしてきた明治の名人たちのエピソード、芸の工夫から演目解説まで、さまざまな角度から「歌舞伎舞踊」についてを語った名著です。上品でやわらかい語り口が心地よく、サクサク読めてしまうのも魅力の一つですが、うっかり油断していると、時々ドキッとするような鋭い至言に出くわす”怖い本”でもあります。木ノ下歌舞伎次回公演『隅田川・娘道成寺』、舞踊二本立てにちなみまして、選んだ次第です。

[voice icon=”http://kinoshita-kabuki.org/wp-content/uploads/2016/05/kinoshita_sq.jpg” type=”l”] 「木ノ下の書棚」も、これで20回を数えました。主に、おススメの古典芸能入門書を紹介してきたわけですが(遠藤周作の『沈黙』だけは例外でしたけど)、次回からは第二期として、ガラリと趣向を変えまして「木ノ下が惚れた日本の小説20選」をやりたいと思ってます。できるだけ古典芸能に関連した小説を多めに……と思っておりますが、あまり縛られずに、好きな小説を好きなように取り上げていくつもりです。楽しみにしていてくださいね。
[/voice]