【東海道四谷怪談ー通し上演ー】俳優インタビュー⑤|中川晴樹

『東海道四谷怪談ー通し上演ー』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
第5回は中川晴樹さんです。

2017年4月24日 森下スタジオにて収録

歌舞伎と今の演劇が地続きになった

はじめは歌舞伎って、僕らがやっている芝居とは別物だと思ってたんですよね。でも今回、完コピ稽古を経験したり木ノ下君の話を聞いてみたりして、当たり前のことなんだけど、地続きにあるということがわかりました。歌舞伎って、様式があって、型があって全部が決められていて、何百年の歴史やつながりでできているコピーみたいなものだと思っていたんですが、どうやらそうじゃないぞと。役者さん一人一人の解釈があって、身体的特徴だったり、クセだったり感覚だったりでその人個人の演技が成立している。それが僕には生々しくて面白くて。時が経ったから伝統芸能になったっていうだけの話で、今のものじゃないからって距離を取ってしまうのはもったいないことだって、僕も感じたし、木ノ下くんも邦生もそう思ったんじゃないかなと。

新鮮な役作りを

(『東海道四谷怪談』の)物語に描かれていることって、現代でも普通にあることですよね。例えば、娘の連れて来た男が、実は会社の金を使い込んでたなんて知ったら、「そんなヤツやっぱり無理」って娘を取り返したくなる気持ちもわかるし、(演じる)四谷左門の筋は通ってる。ただ言い過ぎてしまったから、伊右衛門に殺されてしまった。すごくプライドがあるんだろうけど、自分はどうあれ娘は幸せになってほしいっていう気持ちもある。伊右衛門も正義ではないんだけど、物語って“善い・悪い”じゃないでしょう。かっこいいかかっこ悪いか、美しいか美しくないか。この女と添い遂げたいから父親を殺した、っていうのが美しくも見えてしまうし。だから左門って役は、伊右衛門に殺したいと思わせるキャラクターを作らないといけないだろうなと。でも分かりやすい嫌な奴にもなりたくないし、難しいですね。一幕のクライマックスは、伊右衛門の初めての殺しのシーンだから丁寧にやりたいです。
もう一役の茂助はそれに比べたら気が楽で。二幕は(伊右衛門宅へ)取り立てに行く、落ちぶれちゃってる伊右衛門の説明役なので、小道具のセカンドバックが、キャラ作りの助けになりますね(笑)。
今回の稽古場には映像の人や舞台の人、僕みたいなコメディばかりやってる人もいて、それをまとめる邦生は大変だろうなと思います。でもそのための完コピ(稽古)だった気もしますね。コピーすることでベースを作るというか。あとは邦生と木ノ下くんを飽きさせないようにと思ってます。再演だし、6時間もあるし、ちょっとでも見たことのない、新鮮なものを見せられたらいいなと。

残酷でドラマチックな愛のドラマ

この作品って、四谷左門の譲れないものが娘や家族であるように、当たり前ですけど登場人物の全員に譲れないものがある。怪談というより人間ドラマというか、残酷でドラマチックな……愛のドラマだと思いますね。
お客さんに「観てよかった」と思わせたいですし、長くてしんどかったけど飽きなかったなとか、6時間見ただけの満足度があるようにしたいです。でもお客さんに委ねる部分も相当あると思うので、体調を整えてきてほしいですね。

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