【東海道四谷怪談ー通し上演ー】俳優インタビュー⑨|松田弘子

ふ『東海道四谷怪談ー通し上演ー』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
第9回は松田弘子さんです。

2017年4月26日 森下スタジオにて収録

「感情をコピーする」ということ

木ノ下歌舞伎って、作品毎に演出家が違うので、これまで『三番叟/娘道成寺』(2008)『義経千本桜』(2012/2016)『黒塚』(2015)と観てきましたが、これが全部同じ劇団の作品だと言われると「えーっ」ていう感じですよね。知り合いから「完コピ稽古があるらしい」とかって噂は聞いていましたが、今回出演させていただいたら、全然予想と違っていて。まず歌舞伎の完コピにしても、あんなにカラオケのように、タイミングや間まで細かくなぞるとは思っていなかったです(笑)。初めての稽古の前は、「自分のセリフの時にこういう動作をしているな」程度しか準備していなかったんですが、それが違うとわかって。次に、タイミングを合わせればいいなら“アンドロイド演劇”のつもりでやればいいんだと思って用意していったら、邦生さんには「タイミングだけ合わせすぎです」、先生にも「エモーショナルにやってください」と言われてしまって。コピーといっても形だけコピーするんじゃなくて、その中に流れている感情の動きをコピーすることを求められているんだとわかったのは、面白かったです。

お互いの違いをリスペクトしあえる現場

二役のうち、伊右衛門のお母さん(お熊)は、完コピをやってよかったなと思いましたね。動きやセリフの流れがつながった状態、体に染み込んだ状態で上演台本の稽古に入れたから、やりやすかった気がします。セリフも、どの言葉に念を入れているかとか、この言葉をなぜ立てるかっていうヒントがあったんです。一方、茶屋女房のお政さんは「普通に喋るんじゃないけど、歌舞伎っぽくならないで」と言われて、すごく難しくて……。邦生さんが実際にお手本をやって見せてくれるんですけど、それがすごく上手くて、悔しいんです(笑)。
私がこれまでやってきたのって、青年団での現代口語演劇なので、セリフ自体が違うんですよね。キノカブの現場では、「ツルツル喋ってると引っかかってこないから、“立てて”」と言われるんですが、現代口語演劇は全くその逆で。“自然に”その言葉が立つような語順になっていたり、重要な単語は繰り返し出てきたり。間や細かい反応ーー「あぁ」とか「うん」というようなーーもセリフに書いてあるので、そういうことを自分で考えるというのはやったことがなくて。「そのまま喋っちゃダメだよ」と言われた時に、やり方が違うことに気づきました。
今回の稽古場には、劇団も演技スタイルも、バックグラウンドも全然違う人が集まっていて。でもお互いリスペクトがある。それがすごく面白いです。そんなバラバラな人たちが、木ノ下さんのレクチャーとか完コピによって、まずベースができるのがいいですよね。鶴屋南北や文化文政期のこととか、なぜ(当時は)『東海道四谷怪談』と『仮名手本忠臣蔵』を一緒に上演したのかとか、作品を作る上で大事にしていることとかを、全員が共有して稽古ができるのはいいなと思いました。

これまで見せたことのない自分をお客様に見せたい

6時間って、怯みますよね。でも6時間、全部観た方が面白いので。いわゆる「四谷怪談」とだいぶ違うんじゃないかと思います。いろんな人間がいて、伊右衛門がかっこよくなくて、すごくダメなやつで。というか、伊右衛門だけじゃなくて、皆面白い。私の見どころは……今までやったことない人たちと、やったことのない芝居をやってますので、新しい松田弘子を観に来てください!

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