『東京時代MAP 大江戸編』(新創社編/光村推古書院)

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「木ノ下裕一オススメの古典芸能にまつわる本を紹介する企画。
公演期間までは特別編として、「東海道四谷怪談―通し上演―」に先立ちま、演目をより知るための<木ノ下の書棚>をお見せします。更に深く作品を味わっていただけること間違いなしの関連本を、木ノ下が愛情と自信を持ってご紹介!」

書を持って、町へ出よう!

『東京時代MAP 大江戸編』(新創社編/光村推古書院)

江戸に思いを馳せながら、現代の東京の町を歩く愉しさは、格別です。『東海道四谷怪談』には、実在する(またはかつてしていた)の地名や寺社、川や橋がたくさん登場しますから、観劇前後に実際の土地を訪ね歩くのも一興ですよ。
そんな時、小脇に挟んで持ち歩きたいのが本書。ただの地図本ではありません。江戸の地図と現代の地図を重ね合せることができる画期的なつくりなのです(つまり、江戸地図の頁の上から、透ける薄紙に書かれた現代地図を被せられるようになっているのですね。ヘタな説明ですけど伝わっていますかね?)。今、自分が立っている場所が、江戸時代どうなっていたのか、江戸から東京へ町がどう変貌してきたかが一目瞭然。街あるきに大変重宝します。
序幕の浅草寺界隈を歩いてみるのもよし、お岩様の死骸を乗せた戸板の漂流ルートを辿ってみるのもよし、直助・お袖の悲劇の舞台「深川三角屋敷」跡地を訪ねてみるのもよし、です(「三角屋敷」と呼ばれる三角形の敷地に立った家、本当に深川・法乗院の門前に実在したのですねぇ)。
このコーナーの第一回で紹介した新潮版『東海道四谷怪談』は、場所や地名について言及された注釈が充実していますから、それらを地図と照合しつつ、「四谷怪談ゆかりの地」を巡ってみてくださいね。