四・谷・怪・談
—鶴屋南北『東海道四谷怪談』三幕目(俗に髪梳きの場)よりー

演出・補綴|木ノ下裕一

 

作品解説

前作『yotsuya-kaidan』と同様の演目を取り上げ、木ノ下裕一演出によって上演した。これは、同じ本であっても、演出家が変われば〈見え方〉や作品から受ける〈メッセージ性〉が異なるということを証明することを通じて、古典にとって如何に再検討が必要であるかということを提示することができると考えたからである。それは、あらゆる角度から歌舞伎にアプローチするという木ノ下歌舞伎の行動指針にも大きくかなう。
演出に際し、この演目を歴史的・芸能的視座を持って考察した結果、「普通に人間が普通に生きていたつもりが、各々の胸の内に存在する一抹の〈利己心〉のために、釦の掛け違いが生じ、全員で一つの悲劇に向かう潮流を起こしていく一種の群像劇」と読み取った。
柵状の壁に囲まれた部屋の内側で物語は展開する。壁の隙間からは、その壁の外側にいる人々の姿が垣間見える。さらに〈悲劇のヒロイン・お岩〉と〈悲劇の元凶・お梅〉を一人の俳優が演じることで、物語上では表裏の関係にあるものが一つに重なり、人々が抱える表裏の感情と各々の運命の交錯に翻弄される人々を描き出した。

舞台写真

 
©中山佐代

初演

 
会場|アトリエ劇研
日程|2006年10月28日・29日<全4回公演>
 

プロダクション

 
|出演|
岩田絵梨 植松昂 尾上一樹 川口聡 桐澤千晶 中川昌典 長尾晶子 三間旭浩 宮澤知宏
 
|スタッフ|
美術|杉原邦生 
照明|高原文江 
照明操作|松田麻里 
音響|渡部綾子 
衣裳|山本容子 
ヘア・メイク|富松悠 
小道具|木岡菜津貴 
美術製作|田中倫子 
舞台監督|関田彩乃 
制作|木村悠介
主催|木ノ下歌舞伎