【義経千本桜】俳優インタビュー⑤|佐山和泉

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『義経千本桜-渡海屋・大物浦-』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
第五回は佐山和泉さんです。

2016年5月11日 急な坂スタジオにて収録

二回目の完コピを経て気づいた、歌舞伎の奥深さ

今回で二回目の木ノ下歌舞伎出演なんですが、先日自分が出ていた初演の映像をみて、結構びっくりしたというか、反省しました…。完コピでやった細かい所作や台詞まわしが、本番にどれ位にじみ出るものかわかっていなかったです。勉強不足だったなと。なので、今回は完コピへの挑み方というか、見る回数や着眼点が違いましたね(笑)初演のときより細部まで気を配りましたし、いろんなことが整理された気がします。
前回も今回も、中心というよりサイドにいる役や黒子を完コピさせてもらったんですけど、初演では(お手本)映像のサイドの人たちの動きが不揃いなことが気になったんですね。バレエの群舞のように揃ったほうがいいのにと。でも今回やってみて、歌舞伎はそもそも西洋とはカウントの取り方も違うし、揃うこと自体にそんなに重きを置いていない芸能なのかもなと思いました。揃いすぎるとお客さんも息が苦しくなっちゃいますしね。あと黒子を実際やってみて、裾をさばくとか何気ない動作をするにも、自分で作った無駄な手数をいれてしまうと間に合わないことに気づいたんですよ。そういう「一番効率的な動きをすることが美しさに繋がる」ということも、身をもって知れて面白かったですね。

歌舞伎の言葉の翻訳について

稽古では様々なことを試す中で、歌舞伎の言葉を口語に変換する場面もあります。原文に忠実に一言一句訳すと説明っぽくなっちゃうので、逆に英語の字幕みたいに多少情報量を減らしてもいいから、別の言葉に置き換えてみるとか、色々試してますよ。「ここから口語で」と急に振られることもあるんですが、(共演者の)皆さん言葉のチョイスやセンスが的確で、本当にびっくりします!

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古典作品に触れて思うこと

今回史実を基にした作品に携わってみて改めて思ったのが、正史(国が編纂した歴史)というものは、国同士が「こういう歴史にしておきましょうね」という共通認識だという、その程度のことでしかないということですね。つまり、過去にはものすごい数の人が生きたり死んだりしているけど、歴史に残るのはその中のほんの一握りだし、瞬間を切り取ったものに過ぎないのだなと。「渡海屋」の登場人物は、その<歴史に名を残した人たち>だけど、語られているのは大きな出来事の一部分でしかなくて、私達と変わらない部分がある、普通の人だったのだろうなと思います。そういう感覚が、お客様に肉感として伝わったらいいなと思います。

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佐山和泉 Sayama Izumi[東京デスロック青年団]

1979年生まれ、東京都出身。第6回公演『別人』より東京デスロックに参加。劇団青年団にも所属。主な出演作品として、ポツドール『愛の渦』『夢の城』『女のみち』、庭劇団ペニノ『UNDERGROUND』、青年団『革命日記』『ソウル市民1939恋愛二重奏』、木ノ下歌舞伎『義経千本桜』など。

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