【勧進帳】俳優インタビュー④|亀島一徳

『勧進帳』公演に向けて、出演者の生の声をお届けします。
第四回は亀島一徳さんです。

2016年6月21日 急な坂スタジオにて収録

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木ノ下歌舞伎との出会いは6年前

木ノ下歌舞伎との出会いは初演の『勧進帳』オーディションなので、2010年、今から6年前ですね。きっかけは確かチラシで出演者募集を知って、ピンときたんだと思います。僕が大学生の頃、邦生さんが参加していた『キレなかった♡14才りたーんず』(※)世代の演出家の方々がつくる作品を観て、すごく影響を受けていたので、いつか一緒に仕事したいと思ってたんです。それで応募して、オーディションを経て出演させていただくことになりました。
そのときの歌舞伎のイメージは、距離感としては学生の頃にやったシェイクスピアとあまり変わらないというか。台詞が言いづらかったりする感じも含め、遠さ的には翻訳物をやるのと変わらなかったですね。

※2009年、柴幸男、篠田千明、神里雄大、白神ももこ、杉原邦生、中屋敷法仁ら計6名の同世代演出家が集まり、それぞれの作品をこまばアゴラ劇場にて連続上演した合同企画公演

型について考えた上で演じることの面白さ

稽古前にすり足の時間があるんですけど、自分の体についてだけ考えさせてもらえる貴重な時間ですよね。これは前回(『東海道四谷怪談−通し上演−』)出演した経験も含めての感想なんですけど、完コピも自分がどれだけそこに近づけるかっていう、ある種スポーツマン的な感覚というか。目標とかやるべきことがはっきりしていて、自分の時間を贅沢に使わせていただけてるなって思います。それに何回もお手本ビデオをみて、分析ができる。なんでこの人はこの間を使うのかとか、この人はものすごい昂ったから、この音程で喋っているのかなとか。抑揚とかも含めて型のようにみえていても、突き詰めていくと理由があるんだろうなと。引いた目線で、「こういう構造だからこの人はこういう演技をしている」とか、考えるのが好きなんです。自分ではこうはいわないなというやり方を発見するときとかも、じゃあなんで違うんだろうとか、違う演技プランをストックしておくことは役に立つかなとか考えたりもします。もちろん作品において、どのプランを採用するかの最終判断は邦生さんですけどね。

型が出来た背景も考えると面白いですよね。その型が生まれた瞬間には、必ず感情があったはずじゃないですか。もしかしたらそれを皆、外側だけを真似るようになっただけかもしれないし。だからその型を離れたとしてもそこで生まれた雰囲気は、今の芝居にも活かせるんじゃないかと思います。僕はそういうことをうまく活かせるタイプの俳優ではないですけど(笑)、型をそのままやらなくても、芝居として転用が可能かなって思います。

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番卒や四天王の個性について

今はまだ稽古の途中ですけど、番卒や四天王の描き方が初演とは少し変わっていて。歌舞伎で上演されるときの番卒なんて「甲・乙・丙」なんて括られるくらい無個性で一つの塊みたいかもしれない。でも実はそれぞれ考えがあって、葛藤している。それが少しでも出ればいいかなと思うけど、出し方は非常に難しいです。それは原作には書かれていないし、先人たちもやっていないだろうし、でもだからこそやる意味があると思います。

これからですが、無理なくというか…虚勢を張る意味じゃなく、僕らなりの、嘘のない『勧進帳』になればいいなと思います。無理に奇をてらうでもなく、新しいことするぞ!というのでもなく、本当に僕らだからできる『勧進帳』になると素敵だなと思いますね。

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亀島一徳 Kameshima Kazunori [ロロ]
1986年生まれ。東京都出身。ロロには09年の立ち上げから参加。外部作品への出演も多数。主な出演作にヨーロッパ企画イエティ#8『燃えろ!アストロ闘病記』、キリンバズウカvol.10『ヒトヒトヒト』(14年)。15年には東京グローブ座で上演した『TOKYOHEAD~トウキョウヘッド』、KUNIO12『TATAMI』にも出演。木ノ下歌舞伎作品には『勧進帳』『東海道四谷怪談―通し上演―』に出演。