『21世紀によむ日本の古典20 東海道四谷怪談』(田口章子著 岡田嘉夫絵/ポプラ社)

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「木ノ下裕一オススメの古典芸能にまつわる本を紹介する企画。
『東海道四谷怪談―通し上演―』に先立ち、特別編として演目をより知るための<木ノ下の書棚>をお見せします。更に深く作品を味わっていただけること間違いなしの関連本を、木ノ下が愛情と自信を持ってご紹介!」

敷居は低く、奥深い……開かれる四谷怪談への扉。

『21世紀によむ日本の古典20 東海道四谷怪談』(田口章子著 岡田嘉夫絵/ポプラ社)

[voice icon=”http://kinoshita-kabuki.org/wp-content/uploads/2016/05/kinoshita_sq.jpg” type=”l”] 鶴屋南北の原作を児童書テイストに現代文の小説風に仕立て直した良書です。「原作にチャレンジしたけど、古語がむずかしくて……」という方におススメ。テンポよく読み進めているうちに、四谷怪談の物語がスルスル頭に入ってくるはずです。無味乾燥なあらすじを読んでいるのとは違い、随所に著者独自の解釈が込められているから、物語を立体的に楽しむことができますよ。そうそう、岡田氏の繊細な挿絵も、本書の魅力の一つ。
細部に多少の差異はあるものの、話の流れはかなり原作に忠実です(一番の相違は、隠亡堀に与茂七が登場しないという点。たしかに、あの登場はあまりに唐突、現代人には理解しがたいですから、そこは著者の心配りなのでしょう。……が、あのつじつま無視の登場シーン、歌舞伎らしくって僕は好きなんですけどねー。だから、ちょっと残念)。五幕十場すべてを端折らずに扱ってくれているから、キノカブ版『東海道四谷怪談―通し上演―』の予習にも最適です。
南北が紡いだ一大群像劇に浸るような気分で、ぜひ手に取ってみてくださいね。[/voice]