【東海道四谷怪談ー通し上演ー】俳優インタビュー⑧|西田夏奈子

『東海道四谷怪談ー通し上演ー』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
第8回は西田夏奈子さんです。

2017年4月24日 森下スタジオにて収録

『四谷怪談』を深く知って

『心中天の網島』(2015年)から二回目の木ノ下歌舞伎の出演になりますが、今回は特に(木ノ下)先生のレクチャーを聞けてよかったですね。忠臣蔵と関連がある話だとか、今の歌舞伎を観ただけではわからないことが膨大にあったのと、『東海道四谷怪談』のストーリーも、私自身知らないことだらけだったので。(鶴屋)南北という人の描く、お岩さんのたたみかけるような復讐劇には「もうおよしよ」って言いたくなるくらいですけど……当時の人が見ると痛快だったんですかね。

絶望しながらの完コピ稽古

今回は主に、お弓・お大という二役を演じるんですが、お弓さんは『心中天の網島』で演じた役(河庄女将)と通じる所作や台詞回しがあったので、歌舞伎の完コピ稽古でも少し演技を掴みやすかった気がします。でもお大さんは、とにかくテンポを真似ることが難しくて、「自分の間でやってしまったほうが早いのでは」という気持ちをぐっと抑えました。でもお手本の映像を観ていると、歌舞伎俳優さんの演技は見やすく、わかりやすく、それでいてテンポがよいので勉強になりました。
とにかくコピーしなきゃいけない要素が多くて、3秒のシーンを真似るのにも映像を8回位繰り返して見ないと習得できなくて、「いつ終わるんだろう」と一回絶望しましたね(笑)。そうやって体に染みこませたセリフを、今度は上演台本のセリフに入れ替える作業が始まったんですけど、脳の高齢化からか、時間がかかっています……。でもセリフが少し変わることで気持ちを入れやすくなったところもあるので、どう役として存在するかも含めて、今は(上演台本の方に)うまく移れるよう努力しています。お弓という人は、神経質で幸せになりきれないタイプの人なんじゃないかと思います。物事をポジティブに捉えていけば、もっと幸せな、大らかな人生だったんじゃないかな。娘が伊右衛門に横恋慕していることも、ちゃんと周りが見えていれば「奥さんいる人はダメだよ、もっといい人いるよ」と言ってあげられたんじゃないかと。そういう、周りが見えなくて幸せに気づけないところは自分と重なるかも知れません(笑)。
伊藤家にいるときは、策略に見えては困るところと、策略に見えなければいけないところの塩梅が難しいんですが、「隠亡堀の場」は、ひたすら「必ず民谷伊右衛門を見つけ出したい」という一念があるからそんなに戸惑いがないんです。その願いが断ち切られてしまって、ちょうどよく死んでしまうという、すごい運命なんですけど(笑)。

6時間でしか味わえない感覚を体験してほしい

木ノ下先生が、「キノカブの『東海道四谷怪談』では願いを叶えられない人々の悲しみを見せたい」とおっしゃっていたので、そういう、人々の無念みたいなものが伝わるお芝居になったらと思います。上演時間が6時間なのでひるまれる方も多いと思うのですが、2時間のお芝居では得られない、登場人物をちゃんと見届けるような、一つ一つが積み重なっていく感覚を味わえるんじゃないでしょうか。お客様にはそれを信じて飛び込んで欲しいですね。観劇前のアドバイスを一つするとすれば、どの登場人物が高野家、塩冶家に所属しているのかがわかっていると見やすいと思います。あとはちょっとしたおやつと飲み物を持ってきて、私たちはもちろんですが、お客様も手洗いうがい、当日の体調管理に気をつけていただければ、最高の観劇体験になると思います!

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