木ノ下裕一より、新年のご挨拶

新年のご挨拶~キノカブの去年と、今年~

 
 明けましておめでとうございます。
 みなさまにとって、昨年はどのような年でしたでしょうか。
 木ノ下歌舞伎では、なんといっても、足掛け2年に渡った10周年企画「木ノ下”大”歌舞伎」を、おかげさまで無事、完走することのできた忘れ難い一年でした。
 5公演6演目を、連続的に上演するフルマラソンでして、訪れた土地も、劇団の本拠地である京都が4回、その次に多い東京が3回を筆頭に、名古屋、豊川、松本、豊橋、北九州、三重、香川、宮崎、横浜と日本津々浦々11ヵ所にのぼります。全公演で、延べ、約一万人のお客様にご来場いただきました。ありがたいかぎりです!一万という”数”もありがたいですが、改めて感慨深いのは、つまり一万回の”出会い”をお客様に届けることができたということです。お客様と作品との出会い、お客様と古典との出会い、また、並木千柳や南北や近松など江戸の劇作家との出会い、現代の演劇シーンの先端を走る演出家との出会い……などなど、お客様にとりまして無数の”出会い”が、木ノ下歌舞伎というプラットホームで行われていたとしたら、こんなに嬉しいことはありません。
 12年前、この劇団を旗揚げした際に、「〈古典/現代〉というキーワードを基に、アーティストやお客様の境もなく沢山の人々が交わり、刺激し合いながら、議論を深めていけるような、ボーダレスな思考の場を作りたい」と思ったものですが、その夢がすこしずつカタチになっていることを実感したりもしました。これもひとえに、これまで木ノ下歌舞伎に参加してくださった5人の演出家をはじめ、スタッフさん、俳優さん、劇場のみなさん、劇団を支えてくださったお客様のおかげです。この場をかりて改めて御礼申し上げます。
 さて、”大”歌舞伎を終えた、今年の木ノ下歌舞伎ですが、去年にも負けず劣らず、活発に活動していく所存です。まず、3月には、杉原邦生演出の『勧進帳』を神奈川芸術劇場で再演いたします。関東圏では初上演になりますので、どうぞご期待ください。ちなみに、この作品は、秋にフランス公演が決定しております。海外の反応も楽しみです。そののちも、舞踊作品の再演や、新作(こちらは年末から稽古をはじめ、年明け2019年の2月に上演予定です)など、手を変え品を変え、みなさまのもとに出会いにいきますので、なにとぞ御贔屓のほど、よろしくお願いいたします。
 最後になりましたが、みなさまの幸せな一年を心からお祈りいたしております。

木ノ下歌舞伎主宰 木ノ下裕一

 

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