東海道四谷怪談ー通し上演ー[2017]

上演記録作品について解説

ツアースケジュール

|京都|2017年5月21日(日)京都芸術劇場 春秋座〈全1ステージ〉
|東 京|2017年5月26日(金)〜31日(水)あうるすぽっと〈全6ステージ〉

プロダクション

|作|
鶴屋南北

|監修・補綴|
木ノ下裕一

|演出|
杉原邦生[KUNIO]

|出演|
亀島一徳[ロロ]
黒岩三佳[キリンバズウカ]
箱田暁史[てがみ座]
土居志央梨
田中佑弥[中野成樹+フランケンズ]

夏目慎也[東京デスロック]
中川晴樹[中川晴樹]
小沢道成[虚構の劇団]
緑川史絵[青年団]
西田夏奈子
松田弘子[青年団]
岡野康弘[Mrs.fictions]
森田真和
後藤剛範[オーストラ・マコンド―]

荻野祐輔[東京エスカルゴ。]
緒方壮哉
鈴木正也

猪股俊明
小田 豊
蘭 妖子

|スタッフ|
美術|島 次郎
照明|中山奈美
音響|星野大輔
衣裳|藤谷香子
劇中曲|TaichiMaster
振付|北尾 亘
補綴助手|稲垣貴俊
演出助手|岩澤哲野、鈴木美波
美術助手|角浜有香
衣装製作|秀島史子
演出部|熊木 進、中村未希、山道弥栄
舞台監督|大鹿展明

宣伝美術|外山 央
文芸|関 亜弓
制作|本郷麻衣、加藤仲葉、堀 朝美、三栖千陽

|協力|
エスプレイング、岡村本舗、オーストラ・マコンド―、オポス、オフィス・ラン、急な坂スタジオ、虚構の劇団、キリンバズウカ、KUNIO、サウンドウィーズ、サードステージ、青年団、恥骨、てがみ座、中野成樹+フランケンズ、Baobab、PAPALUWA、快快(faifai)、ファザーズコーポレーション、ままごと、Mrs.fictions、ヨーロッパ企画、libido:、レトル、ロロ

|助成|
公益財団法人セゾン文化財団、芸術文化振興基金[東京]

|共同製作[初演]|フェスティバル/トーキョー

|製作|木ノ下歌舞伎

|共催|木ノ下歌舞伎 [京都]

|主催|京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター[京都]、木ノ下歌舞伎[東京]

あらすじ

背景

時は、高師直こうのもろのおが藩主を務める高野こうの家が隆盛の時代。塩冶えんや家の藩主・塩冶判官はんがんは高師直に刃向かったため切腹に処され、塩冶家はお取り潰しになっていた。仕事を失った塩冶浪人・民谷伊右衛門たみやいえもんは再起を図ろうとするが、その素行の悪さを理由に、妻・おいわを実家に引き取られて……。

第一幕

浅草境内の場

 賑わいを見せる浅草寺の境内は、性別も身分も問わず、多くの人々が集まっていた。境内を訪れた伊右衛門は、お岩の父・四谷左門よつやさもんの窮地を救い、お岩との復縁を求める。しかし左門は、頼み込む伊右衛門を無下にあしらうのだった。その様子を見ていた高師直の家臣・伊藤喜兵衛いとうきへえは、孫のおうめが伊右衛門を慕っていることを知る。
 一方、お岩の妹・おそでは、塩冶浪人で今は薬売りの直助なおすけに想いを寄せられていた。お袖には塩冶浪人の佐藤与茂七さとうよもしちという許婚がいたが、与茂七は主君の仇討ちのため、お袖のもとを離れていた。そのころ、同じく塩冶浪人の奥田庄三郎おくだしょうざぶろうは、ひょんなことから仇討ちの計画を記した廻文状(密書)を喜兵衛らに奪われてしまう。そこに与茂七が通りかかって……。

地獄宿の場

 浅草は“地獄”と呼ばれる、按摩・宅悦たくえつの営む売春宿。お袖は生活の貧しさゆえ、この場所で夜の務めをしていた。お袖に思いを寄せる直助は“地獄”を訪れ、お袖に床を迫る。ところが偶然、与茂七が“地獄”を訪れる。お袖と与茂七は思わぬ再会を喜ぶが、傷つけられた直助は激怒するのだった。

浅草裏田圃の場

 浅草の裏田圃にて、伊右衛門は左門への懇願もむなしく、お岩との復縁を拒まれていた。激しく罵倒され、我慢の限界を迎えた伊右衛門は左門を斬殺してしまう。同じころ、直助も裏田圃にて与茂七と思しき男を殺害していた。そこにお岩とお袖が現れて、左門と与茂七の死体を発見する。涙するお岩とお袖に、伊右衛門と直助は仇討ちを約束するのだった。

第二幕

伊右衛門浪宅の場

 仇討ちを口実に復縁した伊右衛門とお岩だったが、その生活は困窮するばかりだった。二人に仕えていた小仏小平こぼとけこへいは、民谷家に伝わる秘薬・ソウキセイを盗んで伊右衛門の怒りを買い、拷問を受ける。そんな時、伊藤喜兵衛に仕える乳母・おまきが伊右衛門宅を訪れた。お槇は、産後の病に苦しむお岩のため薬を届けに来たのだ。しかし薬を飲んだお岩は突然苦しみはじめて……。

伊藤家屋敷の場

 伊右衛門と仲間の秋山長兵衛あきやまちょうべえたちは、恩義の礼を伝えるべく伊藤家の屋敷を訪れていた。もてなしの最中、喜兵衛は伊右衛門に大金を差し出し、孫のお梅と夫婦になってほしいと頼むが、伊右衛門は応じなかった。そこで喜兵衛は、お岩に贈った薬が人の顔を変える毒薬であることを告白。計画の始終を聞いた伊右衛門は、自分を高野家に推挙することを条件に、お梅との結婚を約束する。

元の伊右衛門浪宅の場

 伊右衛門は顔が変貌したお岩を振り払い、お梅との結婚の準備に奔走する。伊右衛門は、家の手伝いをしている宅悦に、お岩の間男となり二人で家を去るよう言いつけるのだった。ところが宅悦は失敗し、伊右衛門や喜兵衛らの計画を暴露してしまう。それを聞いたお岩は、失意のさなか命を落としてしまった。さらに伊右衛門は、小平を間男に仕立て上げて斬殺する。その夜、伊右衛門宅を喜兵衛とお梅らが訪れるが……。

十万坪隠亡堀の場

 深川・砂村隠亡堀で釣りをしていた伊右衛門は、偶然、母・おくまと再会する。お熊は高野家ゆかりの書状を伊右衛門に渡し、高野家に接近するよう助言する。ところが、そこにやってきた長兵衛に脅迫された伊右衛門は、その書状をやむなく渡してしまうのだった。そんな時、一枚の戸板が川を流れてくる。そこにはお岩と小平の死体が打ち付けられていた。

第三幕

深川三角屋敷の場・小塩田隠れ家の場

 夫・与茂七の仇討ちのため、お袖は直助と仮の夫婦になっていた。ある日、屋敷を訪れた宅悦から姉・お岩の死を聞かされたお袖に、直助は改めて仇討ちを誓う。ついにお袖は直助に身体を許すが、その夜、与茂七が屋敷にやってきた。なぜか生きていた与茂七を殺そうと企む直助と、仇討ちの計画を知る直助の口を封じようと考える与茂七。二人の計画を手助けするというお袖の助言に従い、与茂七と直助は人影を襲撃するが、そこに倒れていたのはお袖だった……。
 同じころ、塩冶浪人・小塩田又之丞おしおだまたのじょうは、歩くことのできない病のため、以前の家来・小平の屋敷で療養していた。しかしある日、主君の仇討ちに備える又之丞に盗みの疑いがかけられる。窮地の又之丞を救ったのは、屋敷に居合わせた塩冶浪人・赤垣伝蔵あかがきでんぞうだった。しかし盗みの疑いにより、又之丞は仇討ちへの参加が叶わなくなってしまう。無念の又之丞の前に、秘薬・ソウキセイを持った小平が現れて……。

夢の場

 七夕の夜、伊右衛門はいなくなった手飼いの鷹を探していた。鷹の行方を尋ねるため訪れた家で、伊右衛門は一人の美しい女性と出会う。伊右衛門は、一目でその女性に惹かれてしまうのだった。

蛇山庵室の場

 身を隠していた庵室で、伊右衛門は目を覚ました。念仏を唱える者たちやお熊、長兵衛らが入れ替わりに伊右衛門を訪ねてくる中、ついに与茂七が姿を見せる。

配役表

民谷伊右衛門    亀島一徳
お岩        黒岩三佳
直助権兵衛     箱田暁史
お袖        土居志央梨
佐藤与茂七     田中佑弥

按摩宅悦 他    島田曜蔵
四谷左門 他    中川晴樹
小塩田又之丞 他  小沢道成
伊藤孫娘お梅 他  緑川史絵
伊藤後家お弓 他  西田夏奈子
孫兵衛女房お熊 他 松田弘子
赤垣伝蔵 他    岡野康弘
小仏小平 他    森田真和
秋山長兵衛 他   後藤剛範

関口官蔵      荻野祐輔
中間伴助      緒方壮哉
奥田庄三郎 他   鈴木正也

伊藤喜兵衛 他   猪股俊明
孫兵衛 他     小田豊
乳母お槇      蘭妖子

すべては四谷怪談から始まった!
木ノ下歌舞伎の原点にして最新形
ほこり立ちこめる世界で、あぶれ者たちの“生”がいまうごめき出す

2006年、木ノ下歌舞伎は、「東海道四谷怪談」より“髪梳きの場”と呼ばれる場面を含む三幕目を抜粋した『yotsuya-kaidan』(杉原邦生演出)、『四・谷・怪・談』(木ノ下裕一演出)の連続上演でその幕を開けました。その後、2013年には念願の『東海道四谷怪談―通し上演―』を実現。旗揚げ11年目の2017年、「木ノ下“大”歌舞伎」で、再びこの大作に挑みます。

『東海道四谷怪談―通し上演―』は、いわゆる“残酷芝居”や“勧善懲悪の復讐劇”として理解される物語を、あらゆる人物が入り乱れる〈一大群像劇〉として再解釈。通常カットされる場面や人物を丁寧にすくい上げ、まったく新しい演目として甦らせました。 全三幕、上演時間六時間に及ぶ本作では、初演につづき杉原邦生が演出を担当。木ノ下歌舞伎メンバーとしては最後の演出作品となる今回、新たな出演者とともに、長年にわたる木ノ下との強力タッグで、かつてない到達点を目指します。