【東海道四谷怪談ー通し上演ー】俳優インタビュー⑦|緑川史絵

『東海道四谷怪談ー通し上演ー』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
第7回は緑川史絵さんです。

2017年4月19日 森下スタジオにて収録

完コピを経て変わった役へのイメージ

『三人吉三』(2014年/2015年)に続いて、木ノ下歌舞伎は2回目の出演になります。今回はお梅という役を演じるのですが、最初は「なんて奴だ!」と思いました。何も悪くないお岩さんに、毒薬を飲ませてしまう原因になる人物じゃないですか。だから歌舞伎の映像を見て、本読みを終えて「この子さえいなければ平和だったのに…」と思いましたね。色んな原因はあると思いますけど、一因ではあるので。でも(歌舞伎の)完コピ稽古をしているうちに、そのイメージが変わっていきました。まず「なんでこんなに間(ま)を使って喋っているんだろう?」と思ったんです。「歌舞伎の言葉だからかな」と思っていたんですけど、「あ、恥ずかしがってるからなんだ!」とわかったらお梅が可愛くなってきて。ピュアな人なんだなと。
『三人吉三』の完コピ稽古では、夜鷹のババア役とかジジイ役とかだと、所作もあまり歌舞伎っぽくないし、喋る速度も速いので真似しやすかったんです。でも今回は間(ま)の取り方もそうですし、所作も大変でした。歌舞伎独特のセリフ回しも難しかったので、電車で(セリフの)音源を聴きながら、間合いを体になじませるよう努力しました。あとは、歌舞伎ってあまり目を合わせないので、コミュニケーションが難しいなと思いましたね。

共感できるポイントを丁寧に演じたい

お梅ってすごくわがままで、甘やかされて育ってきているけど、一途なまっすぐな子だと思うので、ちゃんと伊右衛門さんへの愛が伝わるように演じられたらいいなと思います。家族という小さいコミュニティしか知らなくて、がんじがらめになっている感じは窮屈そうだし、家族に干渉されまくってフラストレーションが溜まっているだろうな、親の束縛から離れたいんじゃないかなと。そこは共感できるポイントだと思うので、丁寧に作っていきたいです。今は上演台本に沿っての稽古が始まっているんですけど、私が用意していたお梅ちゃんとは全く違う演出を邦生さんがされるので、すごく試行錯誤をしていますね。すごく賑やかな演出になっているというか(笑)、まだはっきりと自分の中のお梅ちゃんと繋がっていないんですけど、どうにか一人の人間になれるように、早く(役柄を)くっきりさせたいです。伊藤家を演じる役者さんたちがすごく自由なので、稽古では豊かな時間を過ごさせていただいています。みんなのびのびとやっているので、私も負けないようにと思っています。

『四谷怪談』は南北の描いた「愛のドラマ」

最近、(鶴屋)南北に興味が出てきました。南北って、人への愛というか、関心がすごいなと思っていて。メインの役だけでなく端役まで血が通っていますし。だから人間が嫌いなように見えて、すごく好きなんじゃないかなと思いました。『四谷怪談』はそんな南北の「愛のドラマ」だと思います。みんながすれ違っちゃう切ない話だと。お客様は1日かけて観てくださるので、劇場を出て電車の中や、お家に帰ってから考えちゃうような…あの人にはこういう事情があるのかなとか、それぞれに思いを馳せられるような作品にしたいです。

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