【東海道四谷怪談ー通し上演ー】俳優インタビュー12|後藤剛範

『東海道四谷怪談ー通し上演ー』公演に向けて、
出演者の生の声をお届けします。
第12回は後藤剛範さんです。

2017年4月19日 森下スタジオにて収録

『四谷怪談』の時代はワクワクする

初演に引き続いての出演になります。前回は、歌舞伎についての知識が無かったですし、過去に歌舞伎を一回観に行ったことはあったんですが、退屈というイメージだったのを覚えています。でも子供の頃から江戸時代の雰囲気は好きで、特に江戸前期の栄えていた時代とか、チョンマゲや着物も気に入っていたんです。特にゲームに出てくる江戸が好きで、高校生の時にも悪代官を暗殺するゲームなんかをよくやっていました。幕末も好きで、新選組の本を読んだりしていて。なので『東海道四谷怪談』でも、当時の生活がわかったりするとワクワクします。

再演で気づいた、役についての新しい解釈

歌舞伎の完コピ稽古に関しては、初演の時に「物真似をすればいいんだ」とわかってからすごく楽しくなって。今思うと、完コピは結果じゃなくて過程が大事だと気づいたんでしょうね。そういう意味で、今回は2回目なので気が楽ではありましたけど、もうちょっと芝居をしなければいけなかったのかなという反省点もあります。コピーをした上で、役を演じるということをもうちょっと意識すれば良かったかなと。
初演に続いて演じる秋山長兵衛という役は、お手本の映像にあまり映っていなくて、見得を切ったりもしないので、他の人がやる見得を、家でこっそり真似したりしてましたね(笑)。秋山を演じる時には、ひたすら声を大きく出しているんですけど、ああいう声の出し方はしたことがなかったので勉強になりました。完コピって、そういう今までやってなかったことを教えてくれるし、役者にとっては新しい引き出しをタダでくれるような、すごくありがたい稽古だなと思います。
今は上演台本で稽古をしてますけど、歌舞伎のいい部分を取り入れつつ、わからない部分はおもしろおかしく、そういうスタンスで取り組んでいます。秋山って、伊右衛門の悪仲間だし、悪ふざけが好きで欲望に素直な人だと思うんですけど……最近、劇中ではほとんど酒を飲んでることに気づいたんですね。シラフの時って、小平を捕まえてきて酒を飲むまでの間くらいで。「夢の場」でもすぐ飲んじゃうし。今はまだ掴めてないですけど、なんで酒を飲まずにいられなかったのかとか、考えてますね。酒飲みで乱暴っていうイメージが、(鶴屋)南北さん的にはあるんでしょうか。
初演ではどちらかというと伊右衛門とお岩様の仲を取り持つ感じだったんですけど、今は伊右衛門の背中を押したり、話を進めていく役になってる気がします。一見、馬鹿っぽいというか、人間的に素直に行動しちゃうだけの人なのかなと思ったりもするけど、実は腹の中で何かしら考えてる人なんじゃないかとも思いますし。その辺りを稽古で深めていきたいですね。

ケレンとドラマを両方見せたい

初演に引き続き見どころがいっぱいありますし、より観やすくなっている気がします。伊右衛門と直助の関係性が明確になっていたり……!
今回、初演以上にキャスティングがハマっている気がするし、特に伊右衛門役の亀島さんの一挙手一投足が見どころだと思います。それに対して自分たちがどう影響しあってくるか、というところが面白いんじゃないでしょうか。歌舞伎ってミュージカルみたいな見せ場とドラマを一緒に見せるっていう楽しさがあると思うので、キノカブの『四谷怪談』でもそんな部分を見せられたらいいですね。

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