「三人吉三」キャラクター解説

入り組んだ「三人吉三」のストーリー。そこに登場するたくさんの魅力的なキャラクターをご紹介します。
コラムを読む前に、あらすじや人物相関図と合わせて、ご活用ください!

三人の吉三郎

和尚吉三……伝吉の息子で、おとせの兄。元は吉祥院の小坊主だったが、今では盗みを重ねる小悪党。百両の金子をめぐって争うお嬢吉三とお坊吉三の喧嘩を止めに入ったところ、三人が同じ「吉三」と名をもつことから意気投合し、義兄弟の契りを交わす。

お坊吉三……元武家・安森家の長男。将軍より預かった宝刀・庚申丸を失った科により、父・源次兵衛は切腹、家はお取り潰しとなる。浪人の身で盗み働きを生業としているが、紛失した刀を探し、お家の再興を志している。一重の兄でもある。

お嬢吉三……五歳でさらわれて、旅役者の女方として育てられたのち、今は振袖姿で強盗を働いている。夜鷹のおとせから思いがけなく百両を奪い、偶然に庚申丸も手に入れる。実の父親は八百屋久兵衛。

吉三郎の家族

⼟左衛⾨ 伝吉……和尚吉三とおとせの父。十年前に安森家に忍び入り、庚申丸を盗むが、その際に子をはらんだ犬を殺した祟りか、妻が斑犬のように痣だらけの赤子を産んだのちに狂死した過去を持つ。今では仏に帰依して善行を重ねているが、自分の犯した悪事とその因果に思い悩む。

伝吉娘 おとせ……親孝行のために夜鷹(街娼)として働く。ひょんな事から生き別れの双子の兄・十三郎と出会い、兄妹と知らずに枕を交わしてしまう。和尚吉三の妹でもある。

⼋百屋久兵衛……お嬢吉三の父。十九年前、娘姿で育てていた五歳の息子がさらわれて消息不明になる。その行方を探していた帰り道、赤子を拾い、十三郎と名付けて育てる。

丁子屋の人々と客

花魁 ⼀重……お坊吉三の妹。安森家の断絶後、病気がちな母を支えるため吉原に勤め奉公をしている。妻子ある身の文里と恋仲になり、子を宿す。文里の窮地を救うため、自らに思いを寄せる武兵衛に近づこうとするが……。

釜屋武兵衛……己の立身出世のため、安森家と敵対する海老名軍蔵という男に庚申丸を差し出そうと企てている。そのため、木屋文里のもとにあった庚申丸を金百両で手に入れるが……。一重に惚れ込んでおり、身請けしようとする。

花魁 吉野……以前は品川の遊郭で勤めていたこともあるベテランの遊女。一重の姉貴分で、よき相談相手。お坊吉三と深い仲である。

新造 花琴……丁子屋で働く新米の遊女。一重にとっては妹のような存在。

木屋文蔵と家族

⽊屋⽂蔵[⽂⾥]……刀剣商を営む通人だが、妻子ある身で遊女・一重に入れあげ、廓通いの末に財産を失う。かつては安森家にも出入りしていたこともあり、自分が買った庚申丸が家再興のきっかけになることを知って力になろうとする。

⽂⾥⼥房 おしづ……夫に操を立てて義理を通す良妻賢母で、文里の不義も咎めず、一重にも気を遣う。一重が余命いくばくもないと知るや、文里との間にできた子どもを引き取り、自分の手で育てようと申し出る。

⽊屋⼿代 ⼗三郎……文里の店で働く奉公人。庚申丸の代金である百両を受け取った帰りにおとせと出会う。幼い頃、久兵衛に拾われて育てられたが、実は伝吉の息子でおとせとは双子の兄妹。妹とは知らぬまま、おとせと結ばれてしまう。

⽂蔵倅 鉄之助……幼いながら母親をいたわる孝行な息子。家が落ちぶれても気丈にふるまうが、時には子どもらしくわがままも言う。

おしづ弟 与吉……実家を切り盛りする堅実な青年。義兄である文里の放蕩を耳にし、日頃から姉家族のことを気にかけている。木屋の経営が傾いた際にも金銭の援助をするなど、おしづを陰ながら支える。

人物相関図

画:木ノ下裕一