KYOTO EXPERIMENT 2014 木ノ下歌舞伎『三人吉三』

2014年10月、京都で初演した木ノ下歌舞伎の『三人吉三』。
京都芸術劇場 春秋座にて上演された『三人吉三』はたった2回の本番にもかかわらず、他地域からも多数ご来場いただき、話題となりました。
今回の再演は、そんな初演を元に東京芸術劇場シアターウエスト版として装いも新たに上演!黙阿弥の最高傑作として名高い『三人吉三』がどのように上演されたのか…。初演の記録をご覧ください。
photo = Toshihiro Shimizu



近年、歌舞伎では三人の吉三郎(和尚吉三、お嬢吉三、お坊吉三)に視点が集まる形式での上演が主流となっています。 木ノ下歌舞伎では、現行の歌舞伎ではカットされる、廓を舞台とした文里と遊女・一重のストーリーを完全復活。また初演(江戸時代!)以来一度も上演されていない「地獄の場」を、原作に忠実でありながら大胆に再現しました。
会場は京都芸術劇場 春秋座。歌舞伎劇場としての構造を持つ、この劇場を存分に活かした舞台美術も見所の一つでした。“大尽囲い”を大胆に配置し、定式幕の3色を迷彩柄にデザインした杉原邦生による舞台美術は、歌舞伎と現代劇の垣根を超えるインパクトを与え、春秋座を新しい劇空間へと変貌させました。
『三人吉三』は正月から始まり翌年を迎えるまでの、ある一年の物語です。三人の吉三たちと、彼らを取り巻く様々な人たちの人生を切り取り、活き活きと描かれる〈生と死〉の物語。時代の焦燥に追い立てられながらも、年越に希望を託し生き延びようとする人々の姿を群像劇として描きなおし、黙阿弥の紡ぐ物語の魅力を存分に活かしながら、5時間の大作として蘇った木ノ下歌舞伎の『三人吉三』。東京芸術劇場シアターウエストでは、一部出演者も新たに、さらにブラッシュアップしてお届けします!


|第一幕|

湯島天神の場
松金屋の場
新吉原丁子屋 吉野部屋の場
同 一重部屋の場
柳原夜鷹宿の場
新吉原丁子屋 元の一重部屋の場
新井橋の場
両国橋の場
大川端庚申塚の場
割下水伝吉内の場


《あらすじ》

 安森源次兵衛の家は、何者かにお上の宝刀・庚申丸を盗まれて断絶となっていた。ある年の初め、立身出世を目論む釜屋武兵衛は、巡り巡って刀剣商の木屋文里(文蔵)のもとにあった庚申丸を金百両で手に入れる。同じ頃、吉原の廓・丁子屋を文里が訪れる。彼は妻子ある身ながら、花魁・一重に想いを寄せていた。そんな文里の求愛を、一重は拒みつづけており…。
 文里の使用人・十三郎は、夜鷹(街娼)・おとせと出会い、庚申丸の売上である金百両を紛失する。彼は死のうとしたところを、夜鷹宿主人・土左衛門伝吉に救われる。一方、おとせは十三郎を探す途中、女装の盗賊・お嬢吉三に出会い、持っていた百両を奪われてしまう。安森家浪人・お坊吉三は百両を巡ってお嬢と争うが、そこに元坊主・和尚吉三が現れる。彼が争いを収めたことで、三人は義兄弟の契りを結ぶ。
 その翌朝、命助かり家に戻ったおとせは、そこで十三郎と再会し…。


一幕三場 |丁字屋1の場 一重部屋|妻子ある身で一重のもとへ通い続けた文里だが、廓通いは今宵限りにすると丁字屋の皆々に打ち明ける。

一幕八場|大川端の場|現行歌舞伎では抜粋で上演されることの多い、黙阿弥の名台詞が詰まった有名な場面。三人の境遇が似ていることから義兄弟の契りを結ぶ。


|第二幕|

地獄正月斎日の場
小塚原化地蔵の場
八丁堤の場
新吉原丁子屋 一重部屋の場
同 廊下の場
廓裏大恩寺前の場


《あらすじ》

罪滅ぼしのために坊主に戻っていた和尚吉三は、父の伝吉が金に困っていることを知り、心を痛める。当の伝吉は武兵衛に金を無心するが…。
 一方、文里は廓通いのために財産を失い、落ちぶれていた。文里の子供を身ごもった一重は、彼の窮地を救うため、自らに思いを寄せる武兵衛に近づく。しかし一重は、文里への思いから、武兵衛の求愛をとうとう拒絶してしまう。激昂して座敷を飛び出した武兵衛をお坊吉三が追い、さらに伝吉がふたりの様子を見ていて…。


二幕四場|丁子屋2の場 回し部屋|一重のことを身請けしようと廓にやってきたのは釜谷武兵衛。本作には、巧みなようでいて実は不器用な人物が多数登場する。

二幕五場|大恩寺前の場|お坊、伝吉と百両をめぐるそれぞれの思いが交錯し、終いには殺人にまで発展。思わぬ証拠がこの後露わになる。


|第三幕|

巣鴨在吉祥院の場
丁子屋別荘の場
本郷火の見櫓の場


《あらすじ》

これまでの罪によって追われる身となったお坊吉三とお嬢吉三は、荒れ寺・吉祥院に逃げ延び、身を隠していた。役人・長沼六郎は和尚吉三に、彼の罪を赦す代わりにお坊とお嬢を捕らえるよう命じるが、和尚にはある計画があり…。その後、和尚のもとを十三郎とおとせが尋ねてくる。
 同じころ丁子屋の別荘では、産後の病のため、一重の命の灯が消えようとしていた。そんな折、文里が別荘を尋ねてくる。彼を追って、おしづと息子・鉄之助も姿を見せた頃、江戸の町には雪が降り積もって…。


三幕目一場|吉祥院の場 墓地|やっとのことで希望がみえた十三郎・おとせの幸せも束の間、父・伝吉の死に次ぐ悲劇が待ち受ける。

三幕二場|丁子屋別荘 表|矢も盾もたまらず一重のもとにかけつけた文里、更に相の山(芸をして施しを受ける人々)に扮して陰から窺う妻おしづ


|配役表(初演時)|

大村わたる
和尚吉三/乞食 一/小林の朝比奈
大橋一輝
お坊吉三/乞食 三/閻魔大王
堀越 涼
お嬢吉三/乞食 二/紫式部
村上誠基
木屋文蔵(文里))/金貸 太郎右衛門
熊川ふみ
丁子屋花魁 一重/夜鷹 おはぜ
兵藤公美
文蔵女房 おしづ
塚越健一
八百屋久兵衛/女中/丁子屋新造 花巻/鬼 一
bable
釜屋武兵衛/五官王/医者 山井養仙
森田真和
文蔵倅 鉄之助/浪人 長次/厄払/素帝王/吉祥院堂守 源次坊/丁子屋遣手 おつめ
緑川史絵
丁子屋新造 花琴/夜鷹 おてふ/鬼 四
大寺亜矢子
丁子屋花魁 吉野/夜鷹 おいぼ/鬼 二
森 一生
おしづ弟 与吉/丁子屋花魁 九重/役人 長沼六郎
田中祐気
木屋手代 十三郎/丁子屋若い衆 喜助/鬼 三
滝沢めぐみ
伝吉娘 おとせ/浪人 金太
武谷公雄
土左衛門伝吉/浪人 熊蔵/賽の河原の地蔵/丁子屋主人 長兵衛

|木ノ下裕一の補綴ノートのぞき見ページ|

木ノ下裕一が初演版・木ノ下歌舞伎『三人吉三』のために作り上げた180ページを超える台本。作品の土台となる台本がどのように作られているのか、その秘密を少しだけご紹介しています。


|上演歴|

日程|2014年10月11日、12日[全2ステージ]
会場|京都芸術劇場 春秋座
監修・補綴|木ノ下裕一
演出・美術|杉原邦生
作|河竹黙阿弥

出演|大村わたる、大橋一輝、堀越涼/村上誠基、熊川ふみ、兵藤公美/
塚越健一、 bable、森田真和、 緑川史絵 、大寺亜矢子、 森一生/
田中祐気、 滝沢めぐみ/武谷公雄

舞台監督|大鹿展明 照明|中山奈美 音響|星野大輔 衣裳|藤谷香子 立師|澤村國矢 
所作指導|史(Chika) 文芸|関亜弓 補綴助手|稲垣貴俊 演出助手|岩澤哲野、鈴木美波
演出部|濱田真輝 衣裳補作|秀島史子、鷲尾華子、土屋和歌子 大道具製作|北五美術
宣伝美術|外山央 制作|本郷麻衣
製作|木ノ下歌舞伎 共同製作|KYOTO EXPERIMENT

協力|魚森理恵、清川敦子、竹市朋世、平木康子、溝渕功、山道弥栄、
吉津果美、あやめ十八番、柿喰う客、急な坂スタジオ、キューブ、
KUNIO、劇団しようよ、サウンドウィーズ、青年団、台湾岡崎藝術座、
DULL-COLORED POP、TEAM ▷りびどー大戦争、花組芝居、
PAPALUWA、範宙遊泳、FAI FAI(快快)、(有)レトル
助成|平成26年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業、公益財団法人セゾン文化財団
主催|KYOTO EXPERIMENT