勧進帳

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ツアースケジュール

|松本|2016年7月14日(木)~16日(土)まつもと市民芸術館 小ホール〈全3ステージ/信州・まつもと大歌舞伎関連事業〉

プロダクション

|監修・補綴|
木ノ下裕一

|演出・美術|
杉原邦生[KUNIO/木ノ下歌舞伎]

|出演|
リー5世
坂口涼太郎
高山のえみ
岡野康弘[Mrs.fictions]
亀島一徳[ロロ]
重岡漠[青年団]
大柿友哉[害獣芝居]

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|スタッフ|
音楽|Taichi Master
振付|木皮 成
舞台監督|大鹿展明、田中倫子
照明|伊藤泰行
音響|星野大輔
衣裳|藤谷香子
所作指導|若狭彰珠
補綴助手|稲垣貴俊
演出助手|岩澤哲野、中村未希
運搬|堀内運送
文芸|関 亜弓
宣伝美術|外山 央
制作|本郷麻衣、堀 朝美、三栖千陽

|協力|
鈴木美波、山道弥栄、害獣芝居、急な坂スタジオ、キューブ、KUNIO、krei inc.、サウンドウィーズ、青年団、恥骨、DE PAY’S MAN、FAI FAI[快快]、真昼、Mrs.fictions、libido:、レトル、ロロ

|助成|
公益財団法人セゾン文化財団

|企画・制作|
木ノ下歌舞伎

|主催|
一般財団法人松本市芸術文化振興財団

|後援|
松本市/松本市教育委員会

|協力|
まつもと歌舞伎実行委員会

平成28年度 文化庁 文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業

あらすじ

鎌倉幕府将軍である兄・源頼朝に謀反の疑いをかけられた義経たちは、追われる身となり奥州へ向かっていた。道中の加賀国(※1)・安宅で、義経一行は自らを捕らえるための関所に行く手を阻まれる。義経は強力(※2)の姿、家来たちは山伏の姿に化けて関所を通ろうとするが、関守の富樫左衛門には山伏姿の義経たちを捕らえるよう命令が下されていた。そこで武蔵坊弁慶は機転を利かせて、焼失した東大寺を再建するため勧進(※3)を行っているのだと話す。すると富樫は、弁慶に勧進帳(※4)を読むよう命じるのだった。もちろん勧進帳など持っていない弁慶は、別の巻物を開くと、それを本物と見せかけて勧進帳の文言を暗唱してみせた。その後も一行は山伏を演じきり、関所を通る許しを得る。しかし、ふとしたことから強力が義経ではないかと疑われてしまった。緊迫した状況のなか、弁慶は義経をどこまでも強力として扱い、杖で打ち据える。それを見た富樫は、頼朝の命を破り、一行を通してやるのだった――。


(※1)現在の石川県小松市。
(※2)山伏に伴って荷物を運ぶ従者。
(※3)寺院の建立・修繕などのため、信者や有志者に説いてその費用を奉納させること。
(※4)勧進の目的について記された巻物形式の趣意書。

配役表

武蔵坊弁慶むさしぼうべんけい …… リー5世
源九郎判官義経みなもとのくろうほうがんよしつね …… 高山のえみ
富樫左衛門とがしのさえもん …… 坂口涼太郎
常陸坊海尊ひたちぼうかいそん …… 岡野康弘
亀井六郎かめいろくろう …… 亀島一徳
片岡八郎かたおかはちろう …… 重岡漠
駿河次郎するがじろう …… 大柿友哉
番卒オカノ …… 岡野康弘
番卒カメシマ …… 亀島一徳
番卒シゲオカ …… 重岡漠
太刀持ちの大柿さん …… 大柿友哉

人物相関図

勧進帳_人物相関図

作画:木ノ下裕一

弁慶が!義経が!
あらゆるボーダーラインを超えていく
歌舞伎と現代劇の狭間を行き来する
ミクスチャープレイ、再び

「勧進帳」は、追われる身となった義経一行が、窮地に追い込まれながらも家来弁慶の働きと関守富樫の情けにより、安宅の関を超えるまでのドラマを描いた作品です。木ノ下歌舞伎による『勧進帳』初演版(2010年)は、現代の道路を模した舞台上に引かれた停止線が関を象徴し、その関が国境、主従、過去と現在…など、様々な<境界=ボーダーライン>に読みかえられ、それらを“超える”ドラマとして描き出しました。しかし6年ぶりとなる再演では、キャスト、舞台美術、衣裳など演出を一新。<境界を超える>というテーマをもみつめ直すことで、更なる深化を遂げた作品となりました。

一般的に「勧進帳」は、弁慶が命がけで主である義経を守る姿に心を打たれた富樫が、ついに関を通過させることが物語の核となり、そこに至るまでの男三人の攻防が眼目とされています。しかし杉原演出では、原作でいわゆる脇役として扱われる関所の番人や義経の家来たちにも光を当て、彼らがそれぞれの境界に戸惑いながら生きる姿や、境界を超えようとして起きる摩擦を描き、従来の「勧進帳」という演目を、弁慶・義経・富樫のドラマからすべての人間の<境界をめぐる物語>にまで押し広げました。更に初演からのテーマである境界線の概念をも更に掘り下げ、世の中には「超えるべきもの」「超えられないもの」「敢えて超えないもの」など、多様な境界があると読み解いたのです。特に幕切れ一人佇む富樫の姿からは、他者との間に存在する境界への絶望と希望を同時に受け止め、自らの運命に向かっていく人間の深い孤独が浮かび上がり、「勧進帳」を画一化された「忠義の物語である」というイメージから解き放ちました。

また、『勧進帳』初演版は木ノ下歌舞伎が歌舞伎演目を現代劇化する上で、完全コピーという稽古方法を確立し、歌舞伎の様式や言葉について独自のアプローチで向き合うきっかけとなった作品です。しかし今回の再演では台詞をほぼ現代語にし、象徴的な様式を用いないという新たな挑戦をした上で、江戸時代から脈々と受け継がれた「勧進帳」の世界を構築しました。このことは原作、そして初演の『勧進帳』をも更新したといえるでしょう。これは木ノ下歌舞伎旗揚げから10年、9作品を通じて歌舞伎の現代化に取り組んできた杉原邦生ゆえの境地であり、集大成というべき作品となりました。

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